読書

したたかな脱力系

花田英三・矢口哲男「オン ザ ビーチ」(EKE企画) 本書は、詩の同人誌「EKE」に現在も連載されている往復書簡の、2002〜07年掲載分を1冊にまとめたものである。話題は日常のあれこれであったり、詩の話や酒の話であったりするのだが、すべてが…

「一階部分の思想」ということ(2)

加藤典洋『ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ』(クレイン) 2.サルマン・ラシュディの言葉 もう一人の、サルマン・ラシュディの文章はつぎのようなものだ。ふただび孫引きである。 国連のアナン事務総長は、かつて何に賛成するかではなく、何…

「一階部分の思想」ということ(1)

加藤典洋『ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ』(クレイン) 会社のぼくのパソコンを買い換えることになった。 故障や迷惑メールなどで、使用中のパソコンにいいかげん疲れていたし、ぶん殴りたいという発作に襲われたことも一再ならずあったの…

 フーコーの言葉

ミシェル・ フーコーは、「古典主義時代はあなたのどの著作の中でも、軸となる時代になっています。この時代の明晰さ、あるいは全てが統一され、露にされていた時代、ルネッサンスの『可視性』への郷愁を、ご自身も感じていらっしゃるのでしょうか」という問…

「ソテツガナシ」と「ソテツ地獄」

『聞き書き・島の生活誌(2) ソテツは恩人 奄美のくらし』(盛口満・安渓貴子)を読む 今年2月に、『聞き書き・島の生活誌(1) 野山がコンビニ 沖縄島のくらし』(当山昌直・安渓遊地=編)、『聞き書き・島の生活誌(2) ソテツは恩人 奄美のくらし』…

  村上春樹の「象の消滅」を読む

琉球新報に共同通信編集委員小山鉄郎の署名入りで、「風の歌 村上春樹の物語世界」という記事が連載されている。 連載10回目の6月25日の記事で「象の消滅」について触れられていた。 「象の消滅」は村上春樹の短編小説の中で、ぼくがもっとも好きなもの…

おっぱいという磁場(3)

ところで、舞台となっている町に存在しないのか、このまんがに学校がえがかれることはない。一太も二太も、そのほかの子どもたちも学齢期だとおもうが、学校に行っている様子はない。そのせいかどうか、登場する子どもたちの年齢も、時代背景もさだかでない…

おっぱいという磁場(2)

このマンガは、一太、二太兄弟とその姉かのこの3人を軸に展開する。語り手はほとんどが一太か二太で、かのこがなることはない。なぜかのこが語り手になることがないかというと、受容する人間、受けとめる人間として描かれているからである。この作品を優れ…

  おっぱいという磁場(1)

『ぼくんち』1.2.3(西原理恵子、小学館)を読む (会社の女性スタッフ、キナキナに面白いですよとすすめられて、『ぼくんち』1.2.3(西原理恵子、小学館)を読んだ。そして深い感銘を受けた。3年ほど前のことである。まんがを論じるには、それな…

  愕然

さくらももこの『漫画版 ひとりずもう』上・下巻を読んだ。 ももこ(ちびまる子)の少女期から思春期までを、「ちびまる子ちゃん」とはがらりと変わったリリカルな作風でえがかれていて、これはこれで心から堪能することができた。 上巻は小学校5年生から高…