ビジネスの語法


郷友会の集まりに参加したときのこと。
ある会員が両親がともに亡くなったということで、郷友会を脱会したという報告があった。
それを聞いていた会員の一人が、「この組織も展望がないなー」と言うのが聞こえた。
一瞬だが白らけた空気が流れた。
言った本人は軽口をたたいたつもりなのだろうが、なんとも場違いな印象を受けた。
それは「組織」とか「展望」といういささか硬めの言葉のせいである。
「組織」とか「展望」というのは、いわばビジネスの語法である。
ビジネスであれば、採算がとれないと見切りをつけたら、撤退するとか整理するというように、ドライで合理的な決断を下さなければならないときがある。
だが郷友会の場合は事情がちがう。
郷友会と関わっている誰もが、先細りであることを承知している。承知してつきあっているのである。
那覇などの都市で生まれ育った子や孫たちが、親の郷里にさしたる愛着や関心がなくても無理ないことだ、と親自身が諦念しているのである。
言ってしまえば、会員のすべてが郷友会を末期の目で見ているというのが実情だ。
ビジネスの語法が通用しない世界が、この世にはあるのである。