陽光の下の事故は……

 
 所沢に行くも、事故で通行止めになり、なっつとマナチンコと共に、二時間近く閉じこめられる。行きも、帰りも、つ、つらかった。
 行きも帰りも、トラックと乗用車の事故だった。ここはシチリアか? でもシチリアだったら耐えられるけど。ああ! 耐えられる日本を切に望む。

          (よしもとばなな『赤ちゃんのいる日々』、新潮文庫


シチリアではないけど、山原での話をする。
事故つながりということで。


山原でキャンプをしたときのこと。
テントを張り終えて、
薪につかう流木をかきあつめていると、
ぼくの携帯に娘から、
部落の入り口近くでバイクと接触事故をおこしたという連絡が入った。
いそいでかけつけると、パトカーがとまっている。


バイク事故というから、
相手は大けがをしているのではないか、
バイクはぐちゃぐちゃになっているのではないかなどと、
道々あらぬことを考えながらきたのだが、
現場はのんびりしたものである。
男が右手首をさすっているが、ごく軽い擦り傷。
バイクは道路脇に、いつでも駆け出せるように立てかけてある。


すでに事情聴取は終わったらしく、
警官は無線でどこかと連絡をとっている。
ひと通り事故のもようを説明して終わってから、
娘が思い出したように、バイクの男をぼくに紹介した。
男は「キャンプをしているんですってね」と、にこやかに話かけてくる。
娘は娘で、のんきに、「浦添に住んでいるんですって」と教える。
おい、被害者と加害者、お前たちは世間話をしていたのか。


なんとも拍子抜けの話である。
海を前にして、陽光を浴び潮風に吹かれていると、
ものごとは、煮詰まるということはないのかもしれない。
事故ですら「袖すりあうも多生の縁」という感じだ。