禁煙パトロール


 定期検診のために、南部医療センター・こどもに医療センターに行って、わが目を疑う光景に出くわした。「禁煙パトロール」の腕章をした事務職員らしき男が、館内外を見回っているのだ。
 そこまでやるのか、南部医療センター・こども医療センター。
 館内では、一時間間隔くらいで、「館内・敷地内は全面禁煙になっていますので、ご協力ください」のアナウンスが流れていて、耳障りではあってもそれはそれとして理解できるのだが、「禁煙パトロール」とはやるもんである。


 南部医療センター・こども医療センターの前身である県立那覇病院が与儀にあった頃は、建物の一角に喫煙コーナーがあったのだが、現在地に移転してから、そんな配慮は取っ払われてしまった。
 喫煙にたいしてなにやら相当に腹を決めたというか、なりふりかまわなくなったようなのである。
 けれどもやはり、「禁煙パトロール」までやるとは、その真意が測りかねる。
 ここまでくると、医療や健康といった世俗の問題をはるかにこえていて、ブキミである。


 ぼくは、たばこを吸わなくなって二年以上経つが、正直言って禁煙運動が嫌いである。一般的に運動というものが嫌いということもあるが、とりわけ禁煙運動が嫌いなのは、その清潔思想がうとましいからだ。
 もうひとつ言っておきたいことは、近年の反たばこの風潮に見られるような、全体主義的な傾向が息苦しくてかなわないということ。自分で自分の首をしめているとしか思えない。


 そんならなぜ禁煙したのかと反問する人がいるかも知れない。申し訳ないが、そう反問する人が期待するような、すっきりした答えはない。
 ただ言いうることは、禁煙することと禁煙運動が嫌いであるということは、一人の人間の内部に同居しうるということだ。


 南部医療センター・こども医療センターの待合いコーナーで、禁煙の苦しみとたたかいながら、「禁煙パトロール」が表象している異様な理念に、ぼくはただただあきれかえっていました。