IT製品との終わりなき戦い

 
 2ヶ月ほど前にipad2を買った。嬉しかったことは間違いないが、無条件でそうかというと、そこのところは微妙である。忌々しいという感情がかなりの程度まじっているのである。強いて言えば、うれしさが3分の2、忌々しさが3分の1。IT製品を買うたびに毎度味わう感情である。歳のせいか近年はますますそれがひどくなっている。


 なぜ忌々しさを感じるかというと、手に入れた製品に振り回され、四苦八苦するのが目に見えているからである。つまりイラランミーン カイ イッチャン(袋小路にはまった)状態になるのが分かりきっているからである。それでもなお性懲りもなくIT製品を買ってしまうのは、いかなる業のなせるわざか。いや、業などというと、ことがらを見えなくさせる。ぼくもまた消費社会の煽りに乗せられてられているというのが実体に近いというべきだ。これもまた忌々しさを感じさせる要因だ。


 機械音痴なくせに新しいもの好きなのである。こうみえてもぼくは結構早い時期にワープロを購入している。フロッピーが8インチとか16インチの頃だ。その頃、沈みかけていた「朝日ジャーナル」がワープロ特集を組んでいたのを覚えている。


 現在ぼくはパソコン、ケイタイ、カメラ、ipodipad2などをもっている。しかしどれ一つとして満足に使いこなせない。迷惑がられているのを承知で(これは年の功)、家では娘や孫に、会社ではスタッフにいちいち教わってどうにかこうにか動かしているという体たらくだ。マニュアルを見ればよいではないかという人がいるかも知れないが、ぼくに言わせると、あれは人を混乱させ疲れさせるためにあるようなものである。
          (「WA」56号原稿)